大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)4257号 判決

原判決挙示の証拠に依ると、被告人は原判示日時、日本専売公社足立工場に勤務する同僚職員高橋孝栄から、金が要るので煙草を都合してくれと頼まれて承諾し、同人と打合せた上同工場装置工場内の自己の担当する装置機の後にある乾燥箱内に、作業中、選び出した製造たばこ光を秘匿して置き、作業終了後右高橋孝栄は装置工場内に入り右乾燥箱内に秘匿されている製造たばこ光を取出し、これを装置工場外に持出した事実を認めることができる。しこうして、たばこ専売法第六十六条第一項にいわゆる譲渡とは、有償譲渡であると無償譲渡であるとを問わないし、又所論のように、現実に手交することを要するものと解すべきではないから、被告人が右のような方法に依り高橋孝栄に、製造たばこ光を入手せしめたことは、これを同条にいわゆる譲渡に該当するといわねばならない。論旨摘録の証拠に依れば、右高橋孝栄は、被告人から入手した、右製造たばこを更に小口博保と共謀の上、前記足立工場外に持出したことを認めることができるので、高橋孝栄等が右製造たばこを窃取したものと認定することができるとしても、そもそも、被告人に対する本件起訴状に記載された公訴事実は、これら一連の事実中、被告人の高橋孝栄に対する右製造たばこの譲渡の事実であつて、これが窃盜又は窃盜幇助の事実をも含むものとは見られないこと、起訴状の記載自体に徴し明らかであつて、その訴因も亦製造たばこの不法譲渡であり、原審の審判の対象はこの公訴事実の範囲を超えることはできないし、しかも訴因の変更は公訴事実の同一性を害さない限度において許されるのであるから、原審としては進んで被告人の譲渡行為が単にたばこ専売法違反に該当するものでなく窃盜又は窃盜幇助に該当するや否やを審判するを要するものではない。従つて被告人の弁護人が被告人の起訴された事実が窃盜又はその幇助であると主張するのは、被告人に不利益に帰する事実を主張するもので控訴理由として許さるべきでないし、又原審と同一裁判所である東京地方裁判所において論旨摘録のように高橋孝栄、小口博保が、被告人及び小川信夫と共謀の上製造たばこ光を窃取したものとして起訴されていることは、原審が被告人の所為をたばこ専売法違反と認定したことと必ずしも相矛盾するものということはできない。

かくして被告人の原判示製造たばこ不法譲渡の事実は、原判決挙示の証拠に依りこれを認めるに足り、記録を精査検討しても原判決の右事実の認定が所論のように誤認であることはこれを窺うことができないから、原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。

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